【2021年 磁気研究助成
バーチャル授与式】

第27回磁気健康科学研究助成

第2回岡井治特別助成

30周年記念特別助成2020

バーチャル授与式につきまして

コロナウイルス感染拡大のため、本年予定されておりました「第27回磁気研究助成金授与式」はやむなく中止となりました。そこで、当財団ではWEBサイトにおいて、バーチャル授与式を開催することと致しました。 磁気健康科学セミナーでは、磁気の世界的権威であり、国際生体電磁気学会(BEMS)の最高賞である「ダルソンバール賞」を日本人で初めて受賞された東京大学名誉教授 上野 照剛 先生を講師にお迎えして、生体磁気の作用についてご講演していただきます。また、当財団の理事長である東京電機大学名誉教授 小谷 誠 先生より「生体磁場計測の研究と脳科学」についてお話していただきます。本年度の磁気研究助成対象者のメッセージ動画も配信しておりますので、是非ともご覧ください。

名誉会長 渡邉 利三 ご挨拶

磁気健康科学セミナー
「磁気の不思議と医学への応用」
国際生体電磁気学会(BEMS)
最高賞ダルソンバール賞 日本人初受賞者

東京大学名誉教授 上野 照剛

「磁気の不思議と医学への応用]

 ろうそくの炎やガスの流れが1テスラの磁場によって影響を受けます。モーゼが海を分けたように、8テスラの磁場によって水を二分することが出来ます。8字コイルを用いた経頭蓋的磁気刺激TMS で5ミリメートルの分解能でヒトの脳を選択的に刺激することが出来ます。1テスラの磁場を0.1ミリ秒、瞬間的に発生させ、そのパルス磁場で脳を刺激します。1秒間に数個から数10個のパルス磁場で脳を刺激する高頻度磁気刺激 rTMS はうつ病などの治療に使われます。白血病細胞を1テスラのパルス磁気刺激で破砕することが出来ます。この場合、磁気ナノ粒子を詰め込んだ磁気ビーズと白血病細胞を抗原抗体反応で予め結合させて、その複合体を磁気刺激して物理的に破砕します。4テスラや8テスラの磁場の下で細胞や生体組織が並びます。この磁場配向を利用して、骨の成長を促進させ、また、発芽する軸索の方向を制御して神経再生を促進させることが出来ます。鉄イオンの貯蔵タンパク質であるフェリチンに1 MHz 30 μテスラのマイクロ波を照射すると、フェリチンからの鉄イオンの放出とフェリチンへの鉄イオンの取り込みを、30 %~50% 減少させることが出来ます。鉄イオンが関連する脳の代謝異常においてベータアミロイドやリン酸化タウタンパクの蓄積によって引き起こされるアルツハイマー病などの治療にマイクロ波照射が有効に作用することが期待されます。今後の更なる研究の進展が望まれます。

  • 上野先生
  • 東京大学 
    名誉教授

    上野 照剛

  • (経歴)

    1966年

    九州大学工学部電子工学科 卒業

    1972年

    工学博士号

    1976年

    九州大学工学部電子工学科 助教授

    1979年

    スウェーデン リンシェピン大学 客員研究員

    1986年

    九州大学工学部電子工学科 教授

    1991年

    日本生体医工学会(日本ME学会)論文賞

    1994年

    東京大学医学部医用電子研究施設 教授
    東京大学大学院医学系研究科 教授

    1995年

    財団法人磁気健康科学研究振興財団 評議員

    1997年

    総務省 生体電磁環境研究推進委員会 委員長

    1998年

    スウェーデン リンシェピン大学 名誉博士号

    1999年

    日本生体磁気学会 会長

    2000年

    国土交通省 超伝導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会 委員
    国際電波科学連合 URSI K 生物と医学における
    電磁界委員会 議長

    2001年

    アメリカ電気電子学会(IEEE)フェロー
    2011年 IEEE 終身フェロー)
    国際医用生体工学アカデミー IAMBE フェロー
    日本磁気学会 会長

    2003年

    国際生体電磁気学会(BEMS)会長

    2004年

    財団法人磁気健康科学研究振興財団 審査委員長

    2005年

    財団法人磁気健康科学研究振興財団 理事

    2006年

    東京大学定年退官 東京大学名誉教授
    九州大学大学院工学研究院エネルギー量子工学部門
    特任教授
    スウェーデン シャルマーズ工科大学 ジュビリー客員教授

    2009年

    帝京大学福岡医療技術学部 学部長

    2010年

    国際生体電磁気学会(BEMS)ダルソンバール賞
    日本人初受賞
    アメリカ電気電子学会(IEEE)特別講師賞 世界各国講演

    2016年

    公益社団法人 生命科学振興会 理事

    2017年

    国際電波科学連合 URSI フェロー

    2019年

    公益財団法人渡邉財団 理事

特別講演
「生体磁場計測の研究と脳科学」
東京電機大学 名誉教授
渡邉財団 理事長 小谷 誠

生体磁場計測の研究と脳科学

1972年マサチューセッツ工科大学(MIT)において世界で初めてSQUID磁束計を使って、人間のあらゆる部位の磁界を計測することに成功しました。私はこの研究成果を当時日本で公害問題を起こしていた粉塵被害の解決へ応用し、健康に有害であることを証明して、日本でスパイクタイヤの使用が禁止になりました。1990年には東京電機大学において国家プロジェクト研究「高度脳磁場計測装置の開発」というテーマで総額57億円の研究開発費をいただき、256チャンネンSQUID磁束計を開発しました。この研究によって、脳の中で前頭前野の脳細胞が最も大切なことがわかりました。前頭前野の脳細胞を発育させる方法についてもご説明いたします。

  • 上野先生
  • 東京電機大学 
    名誉教授

    小谷 誠

(現在仕事をされている団体等)

(公)渡邉財団 理事長

(公)ヒロセ国際奨学財団・理事・選考副委員長

(公)福田記念医療技術振興財団・理事

(公)ロッテ財団・評議員・奨学生選考委員会副委員長

(公)竜の子財団・奨学生選考委員会委員長

(財)産業医学研究財団・理事

(公)日本電気技術者協会・理事・副会長・論文選考委員長

(財)神山財団・評議員

(公)ポ-ラ伝統文化振興財団・評議員

 東京電機大学顧問・名誉教授

 カシオ計算機(株)・社外取締役

(公):公益財団法人または公益社団法人の意味

(財):一般財団法人の意味

  • (経歴)

    1956年

    高知県立中村高等学校卒業

    1964年

    東京電機大学大学院工学研究科修士課程修了

    1969年

    東京電機大学工学部電子工学科助教授

    1973年

    工学博士号(東京電機大学)

    1975年

    マサチューセッツ工科大学客員研究員

    1977年

    東京電機大学工学部教授

    1981年

    仙台市スパイクタイヤ公害粉塵研究

    1990年

    「高度生体磁場計測システムの研究開発」が
    国家プロジェクトに選定(60億円)

    1992年

    第31回日本ME学会大会長

    1994年

    日本ME学会副会長

    1995年

    磁気健康科学研究振興財団 理事
    ライフサポート学会会長

    1996年

    東京工業大学 理工学振興会 理事

    1997年

    日本生体磁気学会会長

    1998年

    東京電機大学学長
    第11回生体磁気国際会議会長
    生体磁気国際会議アドバイザーコミティ委員

    2001年

    日本ME学会名誉会員
    大学評価・学位授与機構大学評価専門委員

    2002年

    東京電機大学参与

    2007年

    学校法人 東京電機大学理事
    文部科学省 科学技術・学術審議会学術分科会
    研究環境基盤作業部会委員

    2008年

    東京電機大学名誉教授
    北里大学客員教授

    2010年

    磁気健康科学研究振興財団 理事長

    2013年

    カシオ計算機株式会社社外取締役

    2016年

    東京電機大学・顧問

磁気研究助成選考結果発表
選考委員長 多氣 昌生

選考コメント

磁気健康科学という分野に特化した研究助成は極めてユニークであり、30年近くにわたってこの分野の支援を続けて参りました当財団の実績を私たち関係者はとても誇りに思っています。 研究助成の選考は、なるべく若手の方に多くのチャンスを差し上げること、新たな磁気の応用を目指していること、そして他の助成制度では採択されにくいけれども、この財団ならではの支援の意義が認められること、このような特色を私たちは大切にしています。この度採択された皆様の研究は、とても優れたご提案であることは勿論ですが、このような考えも加えて選出されました。採択された皆様のご活躍期待しております。

30周年記念特別研究助成2020対象者
助成総額:1000万円

当財団は、2024年に設立30周年を迎えます。 30周年記念事業の一環として、2024年までの間、通常の助成額を増額し、研究期間を延長した「特別研究助成」を毎年行います。 磁気健康科学に対する将来性と実現可能性の高い研究が採用されます。

  • 01

    井藤 彰

    名古屋大学
    大学院工学研究科

    教授
    井藤 彰

    詳しくはこちら

    研究テーマ:磁場誘導加温による生体組織の凍結保存技術の開発

    名古屋大学工学研究科の井藤と申します。この度は私の研究に対して助成いただき、誠にありがとうございます。私の研究テーマは、磁場誘導加温による生体組織の凍結保存技術の開発です。磁性ナノ粒子が交流磁場で発熱する特性を利用しまして、肝臓や膵島といった臓器・組織を凍結保存する技術を開発します。現在、臓器や組織の凍結保存技術は確立されていないため、移植可能な臓器であっても、多くの場合は移植に間に合わずに廃棄されています。ドナーの臓器や組織の凍結保存が技術的に可能になれば、世界的に年間数百万人もの患者の健康を改善したり、命を救ったりすることができると考えられます。大変チャレンジングなテーマですが、3年間しっかり取り組んでいこうと考えています。

  • 02

    加賀谷 斉

    藤田医科大学 医学部
    リハビリテーション医学Ⅰ講座

    教授
    加賀谷 斉

    詳しくはこちら

    研究テーマ:運動閾値未満の末梢磁気刺激を併用した上下肢リハビリテーションの効果

    以前から私は四肢に対する電気刺激療法の研究を行っておりましたが,電気刺激では抵抗の大きい臓器である皮膚を介するために疼痛の問題が避けられません.この点,磁気刺激は皮膚の侵害受容器を刺激しない,電極が不要という利点があります.ただし,これまで用いられている磁気刺激は使用するコイルが大きいという欠点がありました.電気刺激では運動閾値未満の弱い刺激においても様々な効果が報告されており,われわれは弱い磁気刺激を与えることが可能な小型の器機の開発に成功したため,この器機を四肢に装着しながらリハビリテーション治療を行うことで,既に有効性が示されている手技にさらなる効果の上積みが得られるのではないかという仮説を立てました.今後3年間にわたり,運動閾値未満の磁気刺激を併用しながら行う上下肢リハビリテーションの実現可能性と有効性を検証していきます.

第2回岡井治特別研究助成対象者
助成総額:100万円

当財団の元理事である故 岡井 治 氏からの寄付金をもとに創設された特別助成です。「神経に対する磁場作用」「磁気刺激による医療応用」に関連した優れた研究が採用されます。

  • 01

    金田 恵理

    大阪大学 医学系研究科
    心臓血管外科

    博士課程2年
    金田 恵理

    詳しくはこちら

    研究テーマ:特定の神経節への磁気刺激による交感神経抑制効果に関する研究

    研究テーマは人体の神経節への磁気刺激による交感神経抑制効果に関する研究です。この度、岡井治先生特別研究助成に採択して頂きました。若手研究者にこのような研究の機会を与えて下さり、渡邉財団の皆様には心より感謝しております。1年間の研究期間において、神経と磁場作用の関連を明らかにすることで、交感神経の異常興奮を原因とする症状に苦しむ患者様が治療へ簡単にアクセスできる機器開発を目指します。私自身、現在は循環器を専門としており、磁気の分野においては学ばなければならないことが多くございます。今後ともご指導の程どうぞ宜しくお願い致します。

第27回磁気健康科学研究助成対象者
助成総額:約1000万円

磁気健康科学を推進するための助成を目的としています。磁気を用いて健康の維持及び増進を図ることをテーマにした基礎研究、応答研究、テーマ指定研究のうち有用な将来貢献度の高い研究が採用されます。

  • 01

    米村 弘明

    崇城大学 工学部
    ナノサイエンス学科

    教授
    米村 弘明

    詳しくはこちら

    研究テーマ:光線力学療法における磁場効果

    私は一貫してラジカルや三重項が関与する光反応について研究を行い、これらの光反応に磁場が影響する事(磁場効果)を数多く報告してきました。そこで、これらの基礎研究における磁場効果の成果を医療への応用研究に展開することにしました。光線力学療法は、光励起によって活性酸素種を生成する薬物を投与し、がんのような体内の有害組織および感染症、皮膚病などの疾病を治療する方法であります。薬物によって最初に生成される活性酸素種が酸素ラジカルの場合がタイプⅠ、一重項酸素である場合がタイプⅡの2種類があります。そこで今回の研究では、光線力学療法に及ぼす磁場の影響について検討する事で、反応の中間過程で発生するラジカルや三重項の生成収率を磁場で制御して、光線力学療法の効率向上や外部制御を目指します。今後、今回の成果をきっかけに、磁気健康科学の発展に貢献したいと思います。

  • 02

    大野 欽司

    名古屋大学 大学院医学系研究科 神経遺伝情報学分野 

    教授
    大野 欽司

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    研究テーマ:超低周波変動する超微弱磁場が誘導するマイトファジーによる病態制御

    1-8 Hzで変動する100 mGという地磁気強度以下の超微弱磁場(ELF-WMF)が、不良ミトコンドリアの選択的分解機構マイトファジーを誘導し、AML12細胞のミトコンドリア量を63%まで低下させることを見出した。ミトコンドリア病患者由来ミトコンドリアDNAと正常核DNAを融合させたサイブリッド培養細胞に対してELF-WMFは電子伝達系酵素活性を最大43%上昇させ、ELF-EWMFがミトコンドリア病の新規治療戦略になることが期待される。マイトファジーが障害されエネルギー産生障害により神経細胞死に至る機構が考えられているパーキンソン病のモデルマウスの運動障害に対してELF-EWMFは顕著な効果を示した。本研究において、ELF-WMFの分子作用機構を明らかにするとともに、各種病態における効果を作用機構解明を含めて検証しました。

  • 03

    荒平 高章

    九州情報大学
    経営情報学部
    情報ネットワーク学科

    専任講師
    荒平 高章

    詳しくはこちら

    研究テーマ:磁場刺激による細胞配向特性を応用した人工骨組織の作製

    この度、第27回研究助成に選定頂きありがとうございます。私の研究テーマは「磁場刺激による細胞配向特性を応用した人工骨組織の作製」です。磁場刺激が及ぼす細胞への影響というのは、様々な種の細胞において研究が展開されています。今回のテーマでは、以前貴財団に助成を頂いたテーマにおいて、開発した磁場刺激装置を使用して二次元培養系で骨芽細胞が磁場刺激によって配向するという知見が得られたので、本テーマでは、その知見を活かして三次元培養系で骨芽細胞を足場内で配向させた人工骨組織を作製することを試みます。着実に研究の成果をあげることができるように研究に励みたいと思います。

  • 04

    小川 まどか

    京都産業大学 現代社会学部
    健康スポーツ社会学科

    助教
    小川 まどか

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    研究テーマ:ベージュ脂肪の分布位置による形態および代謝特性の比較

    私の研究テーマは,磁気共鳴画像法による褐色脂肪とベージュ脂肪の測定方法の確立です.褐色脂肪やベージュ脂肪の活性は,全身のグルコース取込量やインスリン感受性の改善などその効果は多岐に渡り,肥満を予防する新規の治療として,近年,着目されています.しかしながら,褐色脂肪とベージュ脂肪の形態や機能の類似性により,生体内で褐色脂肪とベージュ脂肪を分けて評価できないことが当該分野の課題とされています.本研究では超高磁場MR装置を使用し,褐色脂肪とベージュ脂肪のMR信号差をin vivoで確認することを目標としています.更なる健康増進や医療技術の発展に貢献できるよう,研究に励みたいと思っています.

  • 05

    永富 良一

    東北大学
    大学院医工学研究科

    教授
    永富 良一

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    研究テーマ:パルス磁場が培養骨格筋細胞の収縮機能獲得に及ぼす効果とそのメカニズム

    骨格筋は損傷しても衛星細胞が筋芽細胞として増殖分化し損傷部分が修復されます。筋力トレーニングによる筋力増強のメカニズムの柱の一つとされています。しかしその収縮能獲得のプロセスは明らかになっていません。本テーマでは収縮機能に必要な各種イオンチャネル獲得のプロセスを明らかにしたいと考えています。遺伝子編集技術によって各種イオンチャネルを欠落させることができる筋芽細胞を、共同研究者の大阪工業大学の中村友浩教授の立体培養技術で3次元化し、パルス磁気刺激により生成する変動電場刺激に対する収縮応答を観察することによって、収縮能獲得に必要なイオンチャネルを明らかにしていく予定です。骨格筋のトレーニングにおけるパルス磁場の収縮能獲得への貢献の有無を明らかにすることができると考えています。挑戦的な研究ですが、どうぞよろしくお願いします。

  • 06

    小玉 聡

    東京大学 医学部附属病院
    脳神経内科

    助教
    小玉 聡

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    研究テーマ:脳波同時記録による新たな経頭蓋磁気刺激療法によるてんかんの新規バイオマーカー開発

    私は脳神経内科医として、てんかんの診療・研究にあたっています。てんかんとは、大脳神経細胞の異常な電気的興奮によって生じるてんかん発作を主徴とし、約100人に1人という高い有病率を示す疾患です。てんかん発作によって患者には医学的にも社会的にも様々な不利益が生じるため、適切な診断と治療を行うことが重要ですが、既存の脳波をはじめとする臨床検査は十分な感度・特異度を有さず、時に診断や治療方針の決定が困難であるケースに遭遇します。本研究では、経頭蓋磁気刺激(TMS)に対する脳波(EEG)を記録するTMS-EEGという手法に関して、てんかんの新たなバイオマーカーとしての有用性を検討してまいります。本研究が多くのてんかん患者さんの一助となれるよう努力してまいります。

  • 07

    桑波田 晃弘

    東北大学 大学院工学研究科
    電気エネルギーシステム専攻

    准教授
    桑波田 晃弘

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    研究テーマ:コンパクトダイヤモンド磁気プローブのための永久磁石形状の最適化手法の開発

    がん転移の有無を診断するためには、高感度の磁気センサを用いて、手術中にリンパ節を検出する必要があります。近年、ダイヤモンドセンサ(Nitrogen-vacancy centers in diamond)は、次世代の超高感度の磁気センサとして注目を集めています。本研究の目的は、ダイヤモンドを超高感度磁気センサとして医療現場に適用可能とするために重要な要素である、永久磁石の形状を小型化・最適化するシステムを開発することです。将来の展望として、手術の現場で使用可能な小型の検出システムへとダイヤモンドセンサを搭載することで、これまで不可能であった「生体内の癌の性状」を術中に迅速に観測できる機器の開発を目指します。医学的意義も追求し、癌に特異的に集積する機能性磁気ナノ粒子の超微量検出、癌の基礎研究への貢献など、医学研究への展開を目指します。

  • 08

    峯岸 薫

    横浜市立大学 大学附属病院
    血液・リウマチ・感染症内科

    助教
    峯岸 薫

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    研究テーマ:Na-MRIを用いた全身性強皮症におけるナトリウム代謝異常の解明

    この度は、貴財団の磁気健康科学研究助成に採択していただき心より御礼申し上げます。私は膠原病内科医として専門領域の診療を行いながら、自己免疫疾患の病態解明を目指した臨床・基礎研究と、様々な画像研究に取り組んできました。特に、シンガポールのDuke-NUS Medical schoolに留学したことをきっかけに、Na-MRIという新技術を用いた臨床研究を開始致しました。 食塩の過剰摂取と心血管疾患などの関連は広く知られていますが、近年、生体内のナトリウムイオンは、腎臓だけでなく、皮膚などの臓器とも連携して制御されていることが明らかとなりました。この、組織局所のNa代謝異常が、様々な疾患に関与しており、自己免疫疾患を誘導する可能性も示されています。本研究では、生体内のナトリウムイオンを検出できる、Na-MRIを日本に初導入し、全身性強皮症の病態解明を目指します。膠原病関連疾患の新規治療や予後改善に貢献できる成果をあげられるよう精進して参りたいと思います。

  • 09

    金子 直嗣

    東京大学
    大学院総合文化研究科  

    博士課程2年
    金子 直嗣

    詳しくはこちら

    研究テーマ:脳の可塑的変化を誘導する磁気刺激と経皮的脊髄刺激の連合性ペア刺激における刺激パラメータの検討

    この度は磁気研究助成に採択していただき誠にありがとうございます。私は、脊髄損傷患者や脳卒中患者に対する運動機能の回復に向けたリハビ リテーションのための基礎研究に取り組んでおります。脳や脊髄といった中枢神経系には、環境への適応や⻑期的なトレーニングにより特定 の神経回路が機能的に再編する性質、"可塑性"が存在します。本研究助成の研究は、脳の 可塑的変化を非侵襲的かつ人工的に誘導する連合性ペア刺激について検討するものです。本研究のペア刺激は、皮質一次運動野への経頭蓋磁気刺激と脊髄後根への経皮的電気刺激を組み合わせたものです。磁気刺激と電気刺激の刺激タイミングに着目して、ペア刺激が脳の興奮性をどのように変化させるのかについて明らかにします。本研究成果は、中枢神経系の可塑性に関する基礎知見 となること、新たなリハビリテーション法の開発に貢献することが期待できます。どうぞ宜しくお願い致します。

  • 10

    古賀 農人

    防衛医科大学校
    精神科学講座

    助教
    古賀 農人

    詳しくはこちら

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    研究テーマ:磁気刺激による精神症状発症抑制効果の検討とそのメカニズムの解明

    うつ病や統合失調症といった精神疾患には、根治治療が存在せず、画期的な治療薬も存在しないのが現状です。私の長期的な研究目的は、生物学的な知見に基づいた病態の解明を通して、これらの問題解決に貢献することです。現在は、脳における免疫系の異常と精神症状の病態形成との関係に着目した研究を進めており、最近は、脳内免疫担当細胞であるミクログリアの動態と精神症状との関係に焦点を当てて、病態モデル動物を用いた行動評価や生化学的、形態学的分析を行っています。経頭蓋磁気刺激療法は治療抵抗性のうつ病に対する効果があるとして最近応用が広がっています。効果のメカニズムは明らかになっていませんが、磁気刺激による炎症性サイトカインの減少が報告されており、脳内免疫系の関与が示唆されます。本研究では、頭蓋磁気刺激療法による抑うつ症状緩和にミクログリアが介在する、という仮説を立てて、病態モデル動物を用いた検討を行います。

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