第30回 磁気研究助成
対象者のご紹介

2023年8月~11月において募集された第30回磁気研究助成事業において、応募総数30件の中から、12件の磁気研究が採択されました。「第5回岡井治特別研究助成:総額100万円」に1件、「第30回磁気健康科学研究助成:総額1,115万円」に11件となります。
当財団の選考委員長である多氣 昌生 先生(東京都立大学 名誉教授)の選考結果コメントや助成対象者のコメント動画等をご紹介させていただきますので、ぜひご覧ください。

第30回 磁気研究助成
選考結果コメント
東京都立大学名誉教授
選考委員長

多氣 昌生

第5回
岡井治特別研究助成対象者
助成総額 100万円

当財団の元理事である故 岡井 治 氏からの寄付金をもとに創設された特別助成です。「神経に対する磁場作用」「磁気刺激による医療応用」に関連した優れた研究が採用されます。

  • 01

    上村 真生

    東京理科大学 先進工学部 機能デザイン工学科

    准教授
    上村 真生

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    研究テーマ

    磁性ナノ粒子を用いた
    神経障害性疼痛の遠隔治療法の開拓

    この度は貴財団の磁気研究助成に採択いただき、深く感謝申し上げます。
    今回採択いただいたテーマは、がんや神経損傷などに起因する難治性疾患である神経障害性疼痛に対する革新的な治療方法として、磁性ナノ粒子を用いた神経障害性疼痛の遠隔治療法を開発することにチャレンジするものです。神経障害性疼痛は、全世界に多くの患者がいる深刻な疾患ですが、現在用いられている治療方法は、患者の体に大きな負担がかかることや、治療効果が低いことが課題となっています。そこで本研究では、生体に非侵襲な磁場印加と機能化磁性ナノ粒子を用いることによって、神経細胞の膜上の力学刺激応答性イオンチャネルを局所的に過剰活性化・脱感化させることで、神経障害性疼痛を治療する手法を創出することに取り組みます。この技術の実現により、副作用や患者への負担がない、安全な疼痛治療の実現の一歩を踏み出せればと考えております。

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第30回
磁気健康科学研究助成対象者
助成総額 1,115万円

磁気健康科学を推進するための研究助成を目的としています。磁気を用いて健康の維持及び増進を図ることをテーマにした基礎研究、応用研究、テーマ指定研究のうち有用な将来貢献度の高い研究が採用されます。

  • 01

    横尾 英知

    国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部

    研究員
    横尾 英知

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    研究テーマ

    磁気により制御可能なタンパク質分解医薬品の創出

    この度は、第30回磁気研究助成に採択頂き、誠にありがとうございます。採択頂きました「磁気により制御可能なタンパク質分解医薬品の創出」研究では、タンパク質分解医薬品の磁気制御に挑戦します。PROTACは、生体内のタンパク質を分解できる次世代医薬品モダリティとして期待されています。しかし、分解活性の局在制御や持続時間を制御する必要が有ります。そこで本研究では、分解活性の時空間制御を目的として、磁気ナノ粒子を用いることを計画しました。磁気により細胞内におけるナノ粒子の凝集を制御することで、分解活性を可逆的に制御できる磁気応答性PROTACを開発します。本研究により、磁気を用いたタンパク質分解医薬品の新たな制御方法を確立し、高効率な治療法やケミカルツールを開発することで、医療に貢献したいと考えています。本研究の推進のため、助成金を活用させて頂き、邁進して参りたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。

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  • 02

    小林 功

    金沢大学 理工研究域 生命理工学系

    准教授
    小林 功

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    研究テーマ

    超低周波磁場による骨修復促進機構の解明

    金沢大学理工研究域生命理工学系の小林功と申します。この度は貴財団の助成金へ採択していただき、誠にありがとうございます。私たちの研究室では、超低周波磁場の骨修復への影響について、ゼブラフィッシュの鱗を用いた研究に取り組んでいます。魚類の鱗は体表を覆う外骨格であり、我々哺乳類の骨と相同な器官です。そのため、魚類の鱗には哺乳類の骨と同様に骨芽細胞と破骨細胞という2種類の細胞が分布します。通常、哺乳類の骨は体内に分布することから、その様子を観察することは困難ですが、我々は遺伝子組換えゼブラフィッシュを用いることで、鱗に分布する骨芽細胞と破骨細胞の様子を生きたままの状態で観察する方法を開発しました。私たちはこのゼブラフィッシュの鱗モデルを用いて、超低周波磁場によって、どのような細胞に、どんな影響をもたらすか、について解明することを目指しています。

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  • 03

    井上 聡

    慶應義塾大学 医学部 先端医科学研究所 がん免疫研究部門

    専任講師
    井上 聡

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    研究テーマ

    磁性ナノ粒子を用いた
    安全性に優れた細胞免疫療法の開発

    この度は磁気研究助成に採択頂きまして、御礼申し上げます。CAR-T細胞に代表されるように、特定のがん抗原 を認識するT細胞を体外で準備して輸注する免疫細胞療法が、難治がんに対する治療法として注目されています。抗がん剤などの化合物とは異なり、遺伝子改変技術による機能改変が可能であること、輸注後に生体内で大量増殖(=大量生産)することから、“生きた薬”として脚光を浴びています。しかし問題点として、固形腫瘍に対する治療効果が不十分であることに加え、サイトカイン放出症候群などの副作用が挙げられます。今回の研究は、磁性ナノ粒子・外部磁場を活用することで、これらの課題の克服を目指すものです。今後とも、ご指導ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

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  • 04

    山田 絵美

    九州大学 人文科学研究院 言語学講座

    助教
    山田 絵美

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    研究テーマ

    定常状態誘発磁場による非侵襲的な言語機能マッピングの可能性

    この度は第30回磁気研究助成に採択して頂き、誠にありがとうございます。
    私達のグループでは非侵襲的な脳機能計測手法である脳磁図を用いて言語認知処理の研究を行っています。脳には言語中枢と言われる言語処理に関連した特定の領域があり、これらの領域が損傷すると言語能力が低下するため言語領域の同定は重要です。
    本研究では、言語刺激として刺激を一定の頻度で呈示する定常状態誘発電位法を用いて非侵襲的に言語野及び言語処理に関連する領域を同定することが可能か検討します。定常状態誘発電位法は「反応が堅牢である」、「刺激の呈示周波数を指標とした客観的指標で評価できる」という利点があり、高次脳機能の臨床評価手法として期待されています。
    本研究で得られる研究成果が、研究発展への一助となることを目指します。

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  • 05

    古澤 和也

    福井工業大学 環境学部 環境食品応用化学科

    教授
    古澤 和也

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    研究テーマ

    永久磁石と磁場モジュレーターを組み合わせた
    再生筋組織構築技術の開発

    私は、永久磁石と磁場モジュレーター、および常磁性分子を含む培養液を組み合わせて培養基板上に磁場トラップを展開し、そこで筋芽細胞を高い細胞生存率を維持した状態で長時間培養する技術を開発しております。この研究では、この細胞培養技術を用いて、繊維状やドーナツ状など制御された形の細胞凝集塊を構築する技術を確立します。この細胞凝集塊を筋分化させて様々な形状の筋線維を構築し、さらにこれらを集積してより複雑な形状の再生骨格筋組織を構築します。この再生骨格筋組織は、筋組織の生理学的研究だけでなく、ソフトロボットのアクチュエーターや、培養肉としての応用など、広範な分野での応用が期待できます。この方法を、高価な設備や高度な技術なしで誰でも再現可能な技術として確立します。このことにより、規則的な形状の細胞凝集塊を安価かつ簡単に大量生産可能な、磁石を使用したバイオプロセスを提案することを目指します。

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  • 06

    薮上 信

    東北大学 大学院 医工学研究科

    教授
    薮上 信

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    研究テーマ

    磁性ナノ粒子/生体物質凝集体の磁気的性質の変化を利用した
    バイオ検出法の開発

    この度は第30回磁気研究助成におきまして、研究テーマ「磁性ナノ粒子/生体物質凝集体の磁気的性質の変化を利用したバイオ検出法の開発」について採択していただき、ありがとうございます。私は磁気工学、バイオ医工学等を専門とする大学研究者です。磁気工学は光学的に遮蔽された空間へ計測、力印加、加熱等をリモート、ワイヤレスで制御できる、光、超音波等の技術にはない原理的な長所を有します。ここではバイオ応用の様々な分野で使用される磁性ナノ粒子の液相での制御と高感度計測への応用を目的に、磁性ナノ粒子と生体物質の凝集体に対して、異方性、磁化率等の磁気物性を固体デバイスと同様に制御・評価する技術と新しい抗原検出法を開発します。この技術は生体センサ等の制御性向上、信号およびエネルギー密度の増大等で従来技術の課題を解決出来る可能性が高いと考えています。今後とも引き続き、ご指導、ご支援を頂ければ幸いです。

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  • 07

    此松 和俊

    東北大学大学院医学系研究科 神経内科学分野・てんかん学分野

    医員
    此松 和俊

    詳しくはこちら

    研究テーマ

    トンネル磁気抵抗素子センサを用いた
    ビデオ脳磁図モニタリングシステムの開発

    この度は、2024年の貴財団の磁気研究助成に採択頂き、深く感謝申し上げます。私は、てんかんという疾患に興味があり、臨床研究を行なっています。今回採択頂いたテーマは、「トンネル磁気抵抗素子を用いたビデオ脳磁図モニタリングシステムの開発」です。脳磁図は脳神経細胞の興奮を磁場の側面で捉える検査機器で、正確な信号源推定が可能であることが最大の特徴です。一方で、環境ノイズに左右されやすく、超電導状態で稼働させるために、液体ヘリウムが必要であるなどコスト面の問題があります。トンネル磁気抵抗素子は、広いダイナミックレンジと常温稼動を特徴とした素子であり、室温で頭皮に接触させるだけで脳磁図の計測が可能となります。この素子を用いた脳磁計を開発することで、脳波よりも高い精度の脳機能評価が可能となります。頂いた助成金を本研究の推進のため有効に活用させていただき、意義のある成果を得たいと考えております。

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  • 08

    佐藤 和秀

    名古屋大学大学院医学研究科・病態内科学講座呼吸器内科

    特任講師
    佐藤 和秀

    詳しくはこちら

    研究テーマ

    磁性イメージングと治療を同時達成する
    光温熱化学ナノセラノティクスの実現

    近年、がん治療は飛躍的に進歩しましたが、再発を含めて未だ完治に至っていません。また高齢化に伴って、より低侵襲な治療選択肢が求められています。
    私たちの研究室では、医工連携によって適切な磁性粒子を設計し、経静脈的に投与できる次世代型の標的磁性ナノ薬剤を開発しており、腫瘍細胞を標的して腫瘍部位を描出する磁性イメージングとともに、治療を可能とする新規モダリティの創成に取り組んでおります。助成金のサポートで治療実装に向けての最適化を行いたいと思います。癌治療の新規治療選択肢の提案を実現し、様々ながん患者さんに貢献できればと願っております。
    この助成金を励みとして、より一層精進を重ねたいと存じます。今後も御指導、御鞭撻を賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。

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  • 09

    橋本 淳

    東京医科歯科大学大学院 先端技術医療応用学講座 ジョイントリサーチ講座

    助教
    橋本 淳

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    研究テーマ

    脊磁図を用いた腰椎疾患患者における
    非侵襲的神経機能評価法の開発

    痛みやしびれなどの神経症状に苦しむ腰椎疾患患者は年々増加しています。しかし、その診断に悩むことも多く、画像評価のみでなく神経機能を正確に評価する方法が求められています。脊磁図は、脊椎内に生じる微弱な神経電気活動を磁場を介して可視化する新しい神経機能評価法です。我々が開発中の脊磁計(神経磁界計測装置)は超伝導量子干渉素子(SQUID)磁束計を用い、体表から深く周囲組織に覆われた脊髄や馬尾神経においても非侵襲的かつ詳細に神経電気活動を可視化できます。腰椎疾患患者において、脊磁図を用いた非侵襲的神経機能評価法を開発し、疼痛に苦しむ患者さんや診断に悩む医療者の助けになるよう研究に励んで参ります。

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  • 10

    小林 和弘

    東京大学 先端科学技術研究センター

    特任研究員
    小林 和弘

    詳しくはこちら

    研究テーマ

    生物の磁力応答機構の解明

    この度は第30回磁気健康科学研究助成に採択頂きまして、心から御礼申し上げます。
    私はタンパク質の立体構造解析を専門としており、タンパク質の形を見ることにより、その機能を解明し合理的な機能改変をすることを得意としています。
    現在、私は磁気受容体の構造解析に着しており、生物が第六感を通して磁気を受け取るメカニズムの解明を目指しています。
    さらに、磁気受容の分子基盤を明らかにすることでまだ世界にない分子ツールを開発することも見据えており、磁気を用いた診断、治療をサポートするような新規ツールの開発を目指します。

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  • 11

    臼田 升

    公益財団法人東京都医学総合研究所

    研究員
    臼田 升

    詳しくはこちら

    研究テーマ

    脳脊髄同時磁気共鳴画像による
    随意運動能力の回復を支える脳脊髄連関の定量化法の確立

    この度は第30回磁気健康科学研究助成に採択していただき、誠にありがとうございます。本研究で利用する磁気共鳴画像(MRI)は、非侵襲的に生体の神経構造、神経活動を可視・定量化できる画像手法です。これまでも脳を対象としたMRIが、運動麻痺患者の神経評価や、運動能力の回復を予測するバイオマーカーとして利用されてきました。しかし、随意運動制御は脳だけでなく、筋肉を支配する脊髄によって実現されています。そのため従来の脳を対象としたMRIだけでは、脳と脊髄による随意運動制御のメカニズムを十分に調査することができませんでした。そこで本研究では、脳脊髄同時撮像MRIを確立し、その手法を用いて、脳卒中患者の随意運動能力の回復を支える脳脊髄神経の再編成メカニズムの解明を目指します。本研究の成果が脳卒中患者さんの治療に貢献できるよう励んでまいりますので、皆様のご支援の程、よろしくお願いします。

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