2024年 第5回渡邉利三国際奨学金
海外留学助成対象者のご紹介

渡邉利三国際奨学金は、海外の大学・研究機関で学びたいという高い志を持つ方々の生活費を支援する制度です(給付型:返済義務なし)。2023年11月~2024年2月において募集された第5回渡邉利三国際奨学金事業において、応募総数66件の中から、10件の留学研究が採択されました。
当財団の選考委員長である多氣 昌生 先生(東京都立大学 名誉教授)の選考結果コメントや助成対象者のコメント動画等をご紹介させていただきますので、ぜひご覧ください。

第5回渡邉利三国奨学金
選考結果コメント
東京都立大学名誉教授
選考委員長

多氣 昌生

第5回 渡邉利三国際奨学金
海外留学助成対象者
助成総額1,485万円

  • 01

    杉原 隆太

    大阪大学大学院 医学系研究科


    杉原 隆太

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    研究テーマ

    心筋細胞再生能の重要因子の網羅的探索

    留学先:キングス・カレッジ・ロンドン(イギリス)

    キングス・カレッジ・ロンドンに留学しております、杉原隆太と申します。
    この度は、栄誉ある渡邉利三国際奨学金助成に採択して頂き誠にありがとうございました。
    先進国のみならず地球規模での心不全パンデミックが到来しつつありますが、心不全の死亡率、再入院率は依然として高い状態が続いております。心筋細胞死および線維芽細胞の増殖による心機能低下は、多くの症例では不可逆性変化であるため、再生治療を用いた新規治療法の研究が進められています。
    イギリス、キングス・カレッジ・ロンドンにおける研究では、心不全の病因に基づいた心筋再生の重要因子の探索を行い、そのメカニズムの解析を行っております。この研究を通じて得た知識や手法を用いて、将来の治療法開発につなげていきたいと考えております。

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  • 02

    山口 亜斗夢

    神戸大学大学院 保健学研究科


    山口 亜斗夢

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    研究テーマ

    超音波による骨格筋 Exosome 放出促進を介した新規的がん制御手段の開発

    留学先:ハーバード大学(アメリカ)

    この度は第5回渡邉利三国際奨学金に採択いただき、誠にありがとうございます。私はこれまで内分泌臓器としての骨格筋の機能に着目し、筋の分泌物が免疫系に与える影響についての研究に従事してきました。
    今回ご支援いただく留学では、米国ハーバード大学にて骨格筋由来因子を活用したがんの新たな制御法についての研究を行う予定です。我々は以前、骨格筋が抗がん効果を有するマイクロRNAをExosomeと呼ばれる膜小胞に包含させ分泌することを明らかにしましたが、その詳細な効果は明らかになっておりません。そこで本留学では、骨格筋由来Exosomeのがんに対する効果および血中のExosome濃度を上昇させることによるがん治療効果の解明に取り組みます。将来的には、骨格筋を活用した包括的がん制御法を完成させ、副作用を伴わないがん治療へと発展させることを目標としています。

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  • 03

    橋本 明弓

    慶應義塾大学 経済学部   


    橋本 明弓

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    研究テーマ

    アメリカにおける医療の質及び医療費の格差研究:医師間と病院間のばらつきの比較

    留学先:カリフォルニア大学ロサンゼルス校(アメリカ)

    この度は、第5回渡邉利三国際奨学金に採択いただき、心より感謝申し上げます。私はこれまで、公衆衛生学、経済学、看護学を用いた保健医療政策の効率性評価を行ってきました。留学先であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校では、アメリカの医療の質及び医療費の格差研究を行っています。高齢者の公的医療保険であるメディケアのデータを用い、特に医師間と病院間のばらつきを明らかにし、格差縮小に向けた政策上の示唆を得ることが目的です。また、留学中には、異なる文化や価値観をもつ研究者とコミュニケーションをとりながら、政策エビデンスとして研究の在り方を学び、社会に発信したいと考えています。そして、「国際的かつ学際的な保健医療政策の研究者として、実践課題を解決する窓口になること」を目指しています。この度は、誠にありがとうございました。

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  • 04

    秋谷 梓

    順天堂大学 医学部附属順天堂医院 小児科学講座


    秋谷 梓

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    研究テーマ

    右室圧負荷による機械的シグナル伝達と右心不全発症機序の解明

    留学先:トロント小児病院(カナダ)

    この度は第5回渡邉利三国際奨学金海外留学助成にご採択頂き誠にありがとうございます。
    私は小児科医として先天性心疾患の診療に携わってきました。ご支援頂く留学は、世界でも有数の小児病院における右心不全の研究が目的です。
    私の研究は心臓の右心室を対象としています。右心室は肺に血液を送り出す心室であり、肺機能の維持や左室機能にも関わるため、右心不全が運動耐容能や生命予後と相関します。右心室は圧負荷に対して非常に弱く、圧負荷により生じる機械的シグナル伝達が右室の線維化と硬化を促進し機能不全に至るといわれています。
    その機械的シグナル伝達に関わる転写活性因子の発現と役割を明らかにすることが研究の目的です。最終的な研究成果は右室の線維化と硬化を根本から抑制する薬剤の開発に寄与し、先天性心疾患に留まらず肺高血圧症、拡張型心筋症等の後天性疾患の患者さんの予後にもよい転帰をもたらしたいと考えています。

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  • 05

    尾谷 知亮

    日本赤十字社 和歌山医療センター 放射線診断科


    尾谷 知亮

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    研究テーマ

    PSMA治療を施行した前立腺癌の予後予測モデルの構築

    留学先:スタンフォード大学(アメリカ)

    この度は栄誉ある第5回渡邉利三奨学金に採択いただき、誠にありがとうございます。
    私は2024年4月より、スタンフォード大学の核医学・分子イメージング部門にvisiting scholarとして所属しています。主な研究テーマは放射線同位元素を用いた悪性腫瘍のイメージング、治療です。特に前立腺癌のProstate specific antigen (PSMA)をターゲットとしたイメージング、治療を主な研究テーマとしています。前立腺癌診療はPSMAの登場により、近年大きく進歩を遂げようとしています。従来は同定し難かった転移巣の描出が可能になり、それらをターゲットとした治療が欧米を中心に発展してきており、本邦においても保険収載に向けた動きが進んでいます。ホルモン抵抗性前立腺癌の治療は多岐に渡り、日々進歩を遂げています。この留学を通じて、PSMA治療の特性、治療効果予測に関して多角的な観点から迫っていきたいと考えています。

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  • 06

    芳賀 純香

    慶應義塾大学 理工学部 応用科化学科


    芳賀 純香

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    研究テーマ

    水中に静止した酸素マイクロバブルからの物質移動の可視化

    留学先:ハンブルク工科大学(ドイツ)

    この度は第5回渡邉利三国際奨学金奨学生にご採択いただき、誠にありがとうございます。
    現在私はドイツに渡航し、ハンブルク工科大学混相流研究科で研究を開始しています。
    生物触媒反応を用いた有用物質生成プロセスでは、培養液中への酸素供給が追い付かず生産性の向上が図れない問題が起こっています。そこで私たちの研究グループでは、ファインバブル化により酸素を高速溶解し、固定化酵素充填床で高速反応させる新しいバイオリアクターの開発に成功しました。しかしその最適設計には、酸素溶解メカニズムの解明が必要です。私は留学先が専門とするレーザー蛍光誘起法による溶存酸素可視化技術を用いて、ファインバブルから液中への酸素移動現象の実験的および理論的解明に取り組みます。帰国後も国際交流を続けつつさらに研究開発を進めていきたいです。

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  • 07

    上田 篤

    東京大学 理学系研究科 物理学専攻


    上田 篤

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    研究テーマ

    テンソルネットワーク法による銅酸化物-高温超伝導の解明

    留学先:ゲント大学(ベルギー)

    この度は栄誉ある渡邉財団 国際奨学金に採択いただきありがとうございます。
    私はこの留学を通して、テンソルネットワーク法による高温超伝導物質の性質解明を目指して研究をしていきます。テンソルネットワーク法は、従来よく使われてきたMonte-Carlo法にかわる新たなコンピュータシミュレーションの手法として近年発展してきており、特に高温超伝導などの電子相関の強い問題の解決や量子コンピューターに関わる量子計算の根幹を担う技術として近年注目を浴びています。
    ゲント大学では、この分野の世界的権威であるVerstraete氏とともに物質シミュレーションにフォーカスしたテンソルネットワークの枠組みの確立を目指すとともに、産業的な応用にも貢献していきたいと考えています。

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  • 08

    鈴木 結香子

    慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科


    鈴木 結香子

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    研究テーマ

    がん細胞における薬剤耐性メカニズムの解明と新たな治療標的の同定

    留学先:ハーバードメディカルスクール(アメリカ)

    慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科に所属しております。鈴木結香子と申します。
    この度は、渡邉利三国際奨学金に採択いただき、誠にありがとうございます。私はこれまで、乳がんにおける熱ショックタンパク質HSPB1の病態生理学的役割の解析を行って参りました。今回ご支援いただくHarvard Medical SchoolのMassachusetts General Hospitalへの留学では、最先端の化学プロテオミクスプラットフォームを用いて、上皮性卵巣がんにおいて発がん性転写因子として機能するPAX8の新規低分子阻害剤の効果の検証および作用機序解明を目指します。また、様々なバックグラウンドを持つ海外の研究者と積極的に交流し、国際的な人脈を広げて将来的な研究の発展に繋げたいと考えております。

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  • 09

    内原 正樹

    国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科


    内原 正樹

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    研究テーマ

    ステロイド過剰による治療抵抗性に着目した副腎皮質がんの新規免疫療法の開発

    留学先:ヴュルツブルク大学病院(ドイツ)

    この度は第5回渡邉利三国際奨学金海外留学助成にご採択いただき、誠にありがとうございます。副腎皮質がんは侵攻性が高く、転移例の生存期間は約1年と短く予後不良な悪性の内分泌腫瘍です。有効な治療法は限られており、新たな治療の開発が求められています。私は腫瘍内分泌学を専門とする医師として、多くの悪性の副腎腫瘍の患者さんの診療および研究に携わり、副腎皮質がんの予後不良・治療抵抗性の原因を探索する中で、腫瘍から過剰産生されるステロイドホルモンが腫瘍免疫細胞に与える影響に着目しました。今回留学するドイツ・ヴェルツブルグ大学病院が持つ、独自の腫瘍細胞モデル、豊富な腫瘍標本、内分泌・免疫・腫瘍学を分野横断で網羅した最先端の研究環境を生かして、抗腫瘍治療と内分泌治療を併用した新規治療開発の研究を進めて参ります。

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  • 10

    佐藤 理子

    北海道大学大学院 医学院 呼吸器内科学教室


    佐藤 理子

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    研究テーマ

    ヒトⅡ型肺胞上皮細胞の基底細胞化生の機序解明/ヒト呼吸細気管支におけるRAS(Respiratory airway secretory)細胞のⅡ型肺胞上皮細胞への分化機序解明

    留学先:マウントサイナイ医科大学アイカーン校(アメリカ)

    この度は、渡邉利三国際奨学金助成に採択いただきまして、心より感謝申し上げます。
    私は米国のマウントサイナイ医科大学に留学予定です。呼吸器再生医療分野の研究室で、気道上皮細胞や基底細胞の発生と修復についての基礎研究を行う予定です。
    呼吸器は細胞の多様性が大変大きい臓器で、未だ未解明のことも多く、近年新たに発見される細胞もあります。末期呼吸不全の患者に対して肺移植が検討されることがありますが、本邦では患者や移植施設への負担、医療アクセスなど様々な問題で困難な場合も多く、再生医療の発展が望まれています。
    留学での研究を通して肺再生医療に貢献し、最終的には末期呼吸不全患者の救命に繋げられることを目標としております。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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