2023年 第29回磁気研究助成
対象者のご紹介

2022年8月~11月において募集された第29回磁気研究助成事業において、応募総数16件の中から、8件の磁気研究が採択されました。「第4回岡井治特別研究助成:総額100万円」に1件、「第29回磁気健康科学研究助成:総額700万円」に7件となります。
当財団の選考委員長である多氣 昌生 先生(東京都立大学 名誉教授)の選考結果コメントや助成対象者のコメント動画等をご紹介させていただきますので、ぜひご覧ください。

第29回磁気研究助成
選考結果コメント
東京都立大学名誉教授
選考委員長

多氣 昌生

第4回
岡井治特別研究助成対象者
助成総額100万円

当財団の元理事である故 岡井 治 氏からの寄付金をもとに創設された特別助成です。「神経に対する磁場作用」「磁気刺激による医療応用」に関連した優れた研究が採用されます。

  • 01

    芝田 純也

    新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部

    教授
    芝田 純也

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    研究テーマ

    経頭蓋静磁場刺激が有する
    脳内ネットワーク調節作用の神経生理学的解明

    脳には外からの刺激に応じて、その働きを変化させる可塑性という性質があります。私は磁気や電気を使って頭蓋骨の外から脳を刺激して脳の可塑性を誘導し、脳機能を改善することを目的に研究をしています。
    近年、私が取り組んでいる刺激法に経頭蓋静磁場刺激(tSMS)があります。tSMSは、永久磁石を頭表に留置するだけで、その直下の脳皮質の興奮性を抑制することができます。また、tSMSは脳内の神経ネットワークに作用し、磁石から離れた部位の脳機能をも調節することができます。このようにtSMSは、安全、安価、簡便な脳刺激法として神経疾患の治療やリハビリテーションへの応用が期待されています。
    本研究は、脳活動を記録する脳波を用いてtSMSがもたらす脳内ネットワークへの作用を明らかにしようとする研究です。tSMSが脳可塑性を誘導するメカニズムを明らかにすることでtSMSの臨床応用をさらに進めたいと考えています。

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第29回
磁気健康科学研究助成対象者
助成総額700万円

磁気健康科学を推進するための研究助成を目的としています。磁気を用いて健康の維持及び増進を図ることをテーマにした基礎研究、応用研究、テーマ指定研究のうち有用な将来貢献度の高い研究が採用されます。

  • 01

    森田 康之

    熊本大学大学院 先端科学研究部

    教授
    森田 康之

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    研究テーマ

    磁場操作による培養基板の弾性率制御技術を用いた
    幹細胞ステムネス維持に関する研究

    私はバイオメカニクスにおけるセルメカニクスを研究領域とし、そのなかでの細胞と細胞外マトリックスの力学的相互作用に関して興味があります。今回採択いただいたテーマは、磁性粒子を含む磁場応答性ゲルを作製し、細胞外マトリックスの機械的性質を意図的に操作することにより、幹細胞の機能を能動的に変化させることに挑戦する研究となっています。
    幹細胞は周囲の細胞外マトリックスの力学的性質を積極的に検知し、その力学的環境に応じた振る舞いをします。この特徴を逆手に取り、幹細胞の機能発現の制御を試みようと考えております。この技術の実現により、再生・細胞医療での幹細胞の品質保持に関して貢献できればと思っています。いただいた助成金を本研究の推進のため有効に活用させていただき、意義のある成果を得たいと考えております。

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  • 02

    野田 賀大

    慶應義塾大学 医学部 精神・神経科学教室

    特任准教授
    野田 賀大

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    研究テーマ

    コロナ後遺症に伴うメンタルヘルス障害
    に対する磁気刺激療法の開発

    この度は第29回磁気研究助成におきまして、研究テーマ「コロナ後遺症に伴うメンタルヘルス障害に対する磁気刺激療法の開発」について採択していただきまして、誠にありがとうございます。
    私は経頭蓋磁気刺激を用いた神経生理研究と臨床応用を専門にしている精神科医です。2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による急性期症状が治癒した後にも認知機能障害や慢性疲労、不眠や抑うつ気分などの精神的不調を持続的に訴えるケース(Long COVID)が増えてきています。しかしながら、Long COVIDに対するエビデンスのある治療法はまだ確立されておらず、社会的にも重大な問題となっています。
    本研究ではLong COVIDに対して有効な経頭蓋磁気刺激療法を確立することを目的としております。本研究は医学的にも社会的にも意義がある研究だと思いますので、皆様のご支援の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

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  • 03

    伊藤 雄介

    慶應義塾大学 医学部 先端医科学研究所 がん免疫研究部門

    助教
    伊藤 雄介

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    研究テーマ

    T細胞の抗腫瘍活性を増強する磁性ナノ粒子の開発

    この度は、2023年の貴財団の磁気研究助成に採択頂き、深く感謝申し上げます。今回採択頂いたテーマは、「T細胞の抗腫瘍活性を増強する磁性ナノ粒子の開発」です。
    近年、免疫チェックポイント阻害剤や、T細胞に特定の腫瘍抗原を認識して攻撃させるように遺伝子改変したキメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法などの腫瘍免疫療法が臨床応用されてきていますが、特に固形腫瘍に対する効果は未だ不十分であり、抗腫瘍効果をさらに高めるための方策が必要となってきます。我々の研究室では、T細胞に抗腫瘍活性を賦与するナノ粒子を開発しており、固形腫瘍内へのナノ粒子の集積効率を高めるために、磁性ナノ粒子の使用を検討しております。この度の受賞を励みとして、より一層精進を重ねたいと存じます。今後も御指導、御鞭撻を賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。

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  • 04

    権田 将一

    名古屋市立大学大学院 腎・泌尿器科学分野

    臨床研究医
    権田 将一

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    研究テーマ

    筋層浸潤性膀胱癌のナノ粒子を用いた膀胱温存療法の確立

    近年様々な治療薬が新たに登場している中で、筋層浸潤性膀胱癌の標準治療はいまだに膀胱全摘術となっています。本研究では筋層浸潤性膀胱癌に対して膀胱を温存できるような新しい治療法の開発を目標としています。
    私たちのグループではこれまで磁場誘導加温法を用いた Magnetic Hyperthermia に関する研究を行ってきました。そして、マウス悪性黒色腫やラット脳腫瘍など様々な動物の癌種において高い治癒効果を発揮することを報告してきました。しかし、その欠点として癌細胞に特異的な治療ではないことがかねてより指摘されていました。そこで今回、磁性ナノ粒子に膀胱癌に対する抗体薬物複合体を結合させ膀胱内注入をした後に磁場誘導加温法を追加することで、膀胱癌を選択的に治療することができるのではないかと考えました。本研究が筋層浸潤性膀胱癌の新たな治療開発に貢献できるように励んで参りますので、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

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  • 05

    紙本 貴之

    慶應義塾大学 医学部 リハビリテーション医学教室

    助教
    紙本 貴之

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    研究テーマ

    末梢磁気刺激を用いた痙縮治療の機序解明

    痙縮治療に対する新しい治療法として末梢磁気刺激の有効であるのではないかといわれています。末梢磁気刺激は痛みを伴わずに、服の上からでも簡便に痙縮のある部位を刺激できるのが特徴ですが、痙縮の病態に重要な脊髄反射経路のメカニズムの解明はまだされていません。今回我々は、慢性期脳卒中患者に対して末梢磁気刺激を行い、介入前後でのMotor Evoked Potential(MEP)および脊髄相反性抑制を用いて、脳の可塑性および脊髄反射回路の解明をしていきたいと考えています。

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  • 06

    加藤 辰弥

    ソニーコンピュータサイエンス研究所

    ポスドクリサーチャー
    加藤 辰弥

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    研究テーマ

    下肢への磁気刺激と電気刺激の連合性ペア刺激による
    脳の可塑的変化に対する上肢運動の効果の検証

    本研究では、中枢神経系の可塑的変化をアシストする連合性ペア刺激(PAS)の効率を高める手法を検証します。
    PASでは、一次運動野への磁気刺激と末梢感覚神経への電気刺激を同期させて繰り返すことで、一次運動野から筋へと延びる皮質脊髄路の興奮性を持続的に増大させ、皮質脊髄路の可塑的変化をアシストします。しかし、この手法が効果的に作用しない人もいることがPASの課題です。さて、私のこれまでの研究テーマは、全身の協調運動の基盤となる上肢と下肢の神経相互作用を解明することでした。上-下肢間の神経相互作用の一例として、上肢の随意的な筋収縮中に下肢の皮質脊髄路興奮性が増大することが知られています。この度は、この現象をPASと組み合わせることでPASの効率を高められるのではと考えつき本研究の着想に至りました。
    本研究の結果が脊髄損傷や脳卒中によって下肢機能が低下した患者さんのリハビリテーションに貢献することを期待しています。

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  • 07

    金田 恵理

    大阪大学大学院 医学系研究科 心臓血管外科

    博士課程
    金田 恵理

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    研究テーマ

    神経節に及ぼす磁場のメカニズム解明と
    在宅で使用可能な女性向け医療機器への応用

    私は「女性のホットフラッシュ(予期せず起こる動悸・のぼせ) を治療する医療機器開発研究」を行なっております。特に女性ホルモンを抑える薬を服用している乳がん女性のホットフラッシュ症状は重篤な傾向があるにも関わらず、安全性・有効性が高く、かつ侵襲度が低い治療法はありません。一方で、臨床現場では治療を求める患者様の強いアンメットニーズが存在します。ただでさえ辛いがん治療に加えて、副作用に見舞われる患者様の苦しみは非常に大きなものです。また、強いホットフラッシュ症状のせいで、国内だけで年間36万人もの働く更年期女性が離職せざるを得ない状況も非常に深刻です。これは国力の低下という観点から、女性に関する社会的問題とも捉えられます。
    本助成金を活用して得られる研究成果を基に、ホットフラッシュ症状に苦しむ国内外の女性に新たな治療の選択肢を迅速に届けます。

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