2023年 第4回渡邉利三国際奨学金
海外留学助成対象者のご紹介

渡邉利三国際奨学金は、海外の大学・研究機関で学びたいという高い志を持つ方々の生活費を支援する制度です(給付型:返済義務なし)。2022年11月~2023年2月において募集された第4回渡邉利三国際奨学金事業において、応募総数69件の中から、11件の留学研究が採択されました。
当財団の選考委員長である多氣 昌生 先生(東京都立大学 名誉教授)の選考結果コメントや助成対象者のコメント動画等をご紹介させていただきますので、ぜひご覧ください。

第4回渡邉利三国奨学金
選考結果コメント
東京都立大学名誉教授
選考委員長

多氣 昌生

第4回 渡邉利三国際奨学金
海外留学助成対象者
助成総額1,550万円

  • 01

    藤田 あさひ

    東京大学大学院 医学系研究科


    藤田 あさひ

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    研究テーマ

    小児緑内障の個別化医療実現に向けた
    治療効果評価および予後予測モデル構築

    留学先:ハーバード大学医学大学院(アメリカ)

    この度は、第4回渡邉利三国際奨学金海外留学助成にご採択いただき、誠にありがとうございます。私はこれまで、日本の大規模診療報酬データベースを活用した緑内障臨床疫学研究を行って参りました。
    今回ご支援いただく留学では、Harvard Medical SchoolのMassachusetts Eye and Earにて、全米の眼科レジストリーであるIRIS® Registryを解析し、比較的稀な疾患である小児緑内障の診療実態を明らかにし、治療効果評価および予後予測モデル構築を目指します。また、緑内障臨床研究が盛んな当施設にて研究に従事する貴重な経験を通して海外の研究者と積極的に交流し、国際的な人脈を広げて将来的な研究の発展に繋げたいと考えております。

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  • 02

    矢野 誠一

    九州大学大学院
    医学研究院病態制御内科


    矢野 誠一

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    研究テーマ

    マクロファージのLXRを標的とした非アルコール性脂肪性肝炎
    および心血管疾患の予防・治療戦略の開発

    留学先:カリフォルニア大学サンディエゴ校(アメリカ)

    日本では、1000万人以上が非アルコール性脂肪性肝疾患、200万人がより重度の非アルコール性脂肪性肝炎であると推定され、その罹患率は急速に増加しています。脂肪性肝炎は心筋梗塞を含む心血管疾患の発症と関連があり、これらの病気に共通する原因の1つとして免疫細胞であるマクロファージにおける受容体LXRの機能低下が考えられています。そのため、これまでLXRを活性化する多くの薬剤が開発されてきましたが、いずれも副作用として中性脂肪の値が上昇するため創薬応用は困難でした。しかし、私が留学するカリフォルニア大学サンディエゴ校のChristopher Glass研究室では、この副作用を起こさずにLXRを活性化する化合物を近年発見し、現在はこの薬剤の効果やその詳しいメカニズムを調べる実験を日々行なっています。
    この研究成果が、脂肪性肝炎や動脈硬化の治療法開発に貢献できることを願い、研鑽を積んで参ります。

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  • 03

    赤埴 未宝

    国家公務員共済組合
    虎の門病院


    赤埴 未宝

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    研究テーマ

    肝臓移植を待つ待機患者への適切な臓器分配を目的とした、
    machine learningに基づくアロケーションモデルの構築

    留学先:スタンフォード大学医学部腹部移植外科(アメリカ)

    この度は、栄誉ある第4回渡邉利三国際奨学金助成に採択頂き誠にありがとうございます。
    今回、私は米国のスタンフォード大学医学部腹部移植外科に留学する機会を得ることが出来ました。医療先進国といわれる日本ではありますが、臓器移植、特に肝臓移植においては米国に比べて圧倒的に症例数が少ない現実があります。また、移植医療の制度が十分に洗練されていないこともあり、臓器移植を待つ患者さんに十分に臓器が分配できていないという問題点が指摘されております。この度、肝臓移植に関する全米のビッグデータを機械学習などの手法を用いて系統的に解析し、利用可能な臓器の数が少ない現状において、より国全体、集団の利益が最大限化できる臓器分配に関するアロケーションモデルの再構築を行うことが目的です。さらに、移植医療といっても、初回の移植を受ける方、2回目の移植を受ける方など、様々なpopulationが存在し、それぞれのサブグループにおける適切なアロケーションモデルの構築にも取り組む予定としております。
    最終的に、これらのモデルの実装により本邦での移植医療の発展の後押しができることを最終目標として研究に励んでまいりますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

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  • 04

    平尾 まりな

    マックスプランク石炭研究所


    平尾 まりな

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    研究テーマ

    合成終盤で利用可能な新規官能基化法の開発

    留学先:マックスプランク石炭研究所(ドイツ)

    こんにちは、平尾まりなと申します。この度は渡邉利三国際奨学金に採択頂き誠にありがとうございます。
    私は4月からドイツにあるマックスプランク研究所の博士課程に所属しています。私が所属するRitter研究室は有機合成化学を専門とし、医薬品や生体分子など複雑な化学構造を有する分子にも適用可能な高化学選択的官能基化の開発に取り組んでいます。自身の研究テーマでは、たんぱく質の化学選択的な分子修飾を可能とする手法の開発を目指しています。これは有機化学のみならず生化学に関する知識や技術を要し、これまで有機化学を専門としてきた私にとっては挑戦的な研究テーマではありますが、新しいことを学ぶ喜びを感じながら日々研究に邁進しています。
    将来は、海外での研究経験を活かし、自身の研究成果を社会に還元できる化学者を目指します

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  • 05

    高山 善成

    京都大学大学院 情報学研究科システム科学専攻 人間機械共生系講座


    高山 善成

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    研究テーマ

    サイバーフィジカルシステムに対するシンボリックな構成的制御法の構築

    留学先:パリ・サクレー大学(フランス)

    この春、京都大学大学院情報学研究科を卒業し、フランスのパリ・サクレー大学で留学をしております高山善成と申します。まずはこの度、奨学生として採用をして頂けたことに深く御礼を申し上げます。
    私は、複雑なネットワークシステムを安全に制御するため、システムの階層性やモジュラリティを考慮した制御技術の研究を行っております。今後は、修士課程にて提案したアルゴリズムをさらに発展させながら、それを電力システムや自動運転などのシナリオへと応用していきたいと考えています。学位取得後も留学経験で得た知識や技術を活かし、次世代の動的システムの開発に取り組んでいきたいと考えております。

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  • 06

    小笠原 浩樹

    トヨタ自動車株式会社


    小笠原 浩樹

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    研究テーマ

    自動車全体最適を実現するための車両開発手法の構築

    留学先:マサチューセッツ工科大学(アメリカ)

    近年の環境問題へ対応すべく、自動車は低燃(電)費であることが求められており、自動車メーカーは自動車の軽量化を通じてその実現をすべく開発をしています。
    加えて、付加価値がある自動車を開発するため、先進的な技術が採用されるようになり、自動車の構造はより複雑になっています。自動車は種類にもよりますが、ボディ(骨格)、シート(座席)、タイヤ等の3万点の部品から成り立っており、結果1台の自動車としての重さ、性能、原価が決まっています。そのため各部品設計者は1台の車全体最適を実現すべく3万点の部品の材料や形状等を最適化する必要があります。
    この留学では、車両としての重さ、性能、原価の全体最適設計を実現できる新しい車両開発手法を生み出すことを研究テーマとし、将来は低燃費な車、自動運転等の先進技術を有する車、高加速性能の車などといった付加価値のある自動車をユーザーに手頃な価格で提供していきたいと考えています。

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  • 07

    本田 水月

    京都府立医科大学付属北部医療センター


    本田 水月

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    研究テーマ

    個別化治療時代における分子病理診断の
    発展に資する新しいがんゲノム診断法の開発

    留学先:ナバーラ大学附属病院(スペイン)

    京都府立医科大学北部医療センター 病理診断科 後期専攻医の本田水月と申します。この度は第4回渡邉利三国際奨学金にご採択頂き誠にありがとうございます。
    私は現在、スペイン北部バスク地方に位置するナバーラ大学附属病院 解剖病理学教室 Clínica Universidad de Navarra Anatomía Patológica にて、病理医として病理診断業務に従事しています。同施設は大規模遺伝子解析センターや臨床治験部門を併設し、顕微鏡を使った従来の病理組織学的診断と、患者個人がそれぞれ持つがん遺伝子情報を統合させた分子病理診断およびがんゲノム治療が盛んに行われています。日本では2019年にがん遺伝子パネル検査が保険適応になり、今後ますます需要が高まる「がん個別化治療」の将来を見据え、その発展に貢献できるよう努力して参ります。

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  • 08

    吉田 絵里菜

    東京工業大学大学院 物質理工学院 材料系材料コース


    吉田 絵里菜

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    研究テーマ

    精密分子配列制御されたポリペプトイドの
    合成および界面特性に対する組成と構造の影響

    留学先:コーネル大学(アメリカ)

    今日の半導体リソグラフィ技術開発において、フォトレジスト中の光酸発生剤などの添加剤の局所分布ならびにレジスト母体の分子集合体の形成が、パターニング後に1~2 nmサイズの構造欠陥をもたらす原因となることが明らかにされつつあります。この課題の克服には、従来のレジスト材料を抜本的に見直した分子均一性に優れた新規材料の開発が鍵を握っています。留学先となる米国コーネル大学においては、新規EUVリソグラフィ材料の開発としてポリペプトイドに着目します。ポリペプトイドは、従来のEUVリソグラフィ材料を凌駕する高い分子均一性が特徴であり、光酸発生剤の膜内の分散性に基づく高感度化と構造欠陥の抑制に大きな期待があります。
    本留学では、分子配列が精密に制御されたポリペプトイドを合成し、界面特性ならびに光酸発生剤に対する組成分布と構造均一性の関係を明らかすることを目標にしたいと考えています。

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  • 09

    清水 隆

    大阪大学 微生物病研究所 分子免疫制御分野


    清水 隆

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    研究テーマ

    免疫受容体による糖脂質認識が及ぼす
    神経変性疾患への影響の解明と治療への応用

    留学先:フライブルグ大学(ドイツ)

    私は内科医として臨床経験を積んだ後、免疫学的観点から神経変性疾患についての研究を行っております。神経変性疾患では遺伝的・環境的要因により異常に蓄積する内因性物質によって引き起こされる細胞毒性が神経細胞死の主なメカニズムと考えられてきました。近年、免疫細胞であるグリア細胞が病態に寄与している可能性も示唆されてきておりますが、その詳細な分子メカニズムについては明らかになっておりません。
    今回の留学先であるドイツ・フライブルク大学では、神経変性疾患モデル動物を用いて免疫受容体による内因性物質の認識を介した病態メカニズムについて研究を行い、これを標的とした新たな治療法開発に繋げたいと考えております。

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  • 10

    大宅 一郎

    京都大学大学院 工学研究科 分子工学専攻


    大宅 一郎

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    研究テーマ

    有機-無機ハイブリット物質における物性探索

    留学先:ハーバード大学(アメリカ)

    この度は、栄誉ある渡邉利三国際奨学金助成に採択頂きありがとうございます。
    物理学において、対称性の破れすなわちキラリティーはさまざまな興味深い物理現象を誘起することから、重要な概念として大きな研究関心を集めてきました。しかしながら、現実の物質においてこのキラリティーを制御することは難しく、物質開発におけるキラリティー制御の難しさがこの分野の進展の立速となっている背景があります。一方で近年、キラリティーを持った有機物の合成、分離に関する技術の進展がめざましく、これら有機物を電子物性に応用しようとする試みがなされています。
    私は、このような化学的手法を用いたキラリティーの制御を物性物理学に導入することにより、対称性の破れに基づく新たな物理学を開拓しようと考えており、多様な測定手法や合成法を組み合わせることにより、新たな物理現象の開拓ならびに物質科学基盤の創出を目指しています。

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  • 11

    大道 浩志

    慶應義塾大学大学院 理工学研究科 開放環境科学専攻


    大道 浩志

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    研究テーマ

    実験データに基づく流れ場の低次元化と制御則の構築

    留学先:カリフォルニア大学ロサンゼルス校(アメリカ)

    このたび、奨学生に採用頂きました慶應義塾大学大学院理工学研究科の大道浩志と申します。海外留学助成金に採択頂きましたことに、心より御礼申し上げます。
    今回私は交換留学の制度を活用し、カルフォルニア大学ロサンゼルス校への留学を予定しております。留学先では、水や空気などの流れるものを対象とする流体力学の研究に取り組みます。コンピューターの計算能力は近年大きく発達し、多くの流体現象のシミュレーションが可能となりました。しかし、大規模な流れやその制御のシミュレーションには未だ多くの困難が残されております。そこで、機械学習の技術も活用して取り回しが容易な形にモデリングを行い、制御則を効率的に導くフレームワークを提案することを目標としています。

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