バーチャル授与式につきまして
コロナウイルス感染拡大のため、本年予定されておりました「第27回磁気研究助成金授与式」はやむなく中止となりました。そこで、当財団ではWEBサイトにおいて、バーチャル授与式を開催することと致しました。 磁気健康科学セミナーでは、磁気の世界的権威であり、国際生体電磁気学会(BEMS)の最高賞である「ダルソンバール賞」を日本人で初めて受賞された東京大学名誉教授 上野 照剛 先生を講師にお迎えして、生体磁気の作用についてご講演していただきます。また、当財団の理事長である東京電機大学名誉教授 小谷 誠 先生より「生体磁場計測の研究と脳科学」についてお話していただきます。本年度の磁気研究助成対象者のメッセージ動画も配信しておりますので、是非ともご覧ください。
磁気健康科学セミナー
「磁気の不思議と医学への応用」
国際生体電磁気学会(BEMS)
最高賞ダルソンバール賞 日本人初受賞者
東京大学名誉教授 上野 照剛
「磁気の不思議と医学への応用]
ろうそくの炎やガスの流れが1テスラの磁場によって影響を受けます。モーゼが海を分けたように、8テスラの磁場によって水を二分することが出来ます。8字コイルを用いた経頭蓋的磁気刺激TMS で5ミリメートルの分解能でヒトの脳を選択的に刺激することが出来ます。1テスラの磁場を0.1ミリ秒、瞬間的に発生させ、そのパルス磁場で脳を刺激します。1秒間に数個から数10個のパルス磁場で脳を刺激する高頻度磁気刺激 rTMS はうつ病などの治療に使われます。白血病細胞を1テスラのパルス磁気刺激で破砕することが出来ます。この場合、磁気ナノ粒子を詰め込んだ磁気ビーズと白血病細胞を抗原抗体反応で予め結合させて、その複合体を磁気刺激して物理的に破砕します。4テスラや8テスラの磁場の下で細胞や生体組織が並びます。この磁場配向を利用して、骨の成長を促進させ、また、発芽する軸索の方向を制御して神経再生を促進させることが出来ます。鉄イオンの貯蔵タンパク質であるフェリチンに1 MHz 30 μテスラのマイクロ波を照射すると、フェリチンからの鉄イオンの放出とフェリチンへの鉄イオンの取り込みを、30 %~50% 減少させることが出来ます。鉄イオンが関連する脳の代謝異常においてベータアミロイドやリン酸化タウタンパクの蓄積によって引き起こされるアルツハイマー病などの治療にマイクロ波照射が有効に作用することが期待されます。今後の更なる研究の進展が望まれます。
東京大学
名誉教授上野 照剛
-
(経歴)
1966年
九州大学工学部電子工学科 卒業
1972年
工学博士号
1976年
九州大学工学部電子工学科 助教授
1979年
スウェーデン リンシェピン大学 客員研究員
1986年
九州大学工学部電子工学科 教授
1991年
日本生体医工学会(日本ME学会)論文賞
1994年
東京大学医学部医用電子研究施設 教授
東京大学大学院医学系研究科 教授1995年
財団法人磁気健康科学研究振興財団 評議員
1997年
総務省 生体電磁環境研究推進委員会 委員長
1998年
スウェーデン リンシェピン大学 名誉博士号
1999年
日本生体磁気学会 会長
2000年
国土交通省 超伝導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会 委員
国際電波科学連合 URSI K 生物と医学における
電磁界委員会 議長2001年
アメリカ電気電子学会(IEEE)フェロー
2011年 IEEE 終身フェロー)
国際医用生体工学アカデミー IAMBE フェロー
日本磁気学会 会長2003年
国際生体電磁気学会(BEMS)会長
2004年
財団法人磁気健康科学研究振興財団 審査委員長
2005年
財団法人磁気健康科学研究振興財団 理事
2006年
東京大学定年退官 東京大学名誉教授
九州大学大学院工学研究院エネルギー量子工学部門
特任教授
スウェーデン シャルマーズ工科大学 ジュビリー客員教授2009年
帝京大学福岡医療技術学部 学部長
2010年
国際生体電磁気学会(BEMS)ダルソンバール賞
日本人初受賞
アメリカ電気電子学会(IEEE)特別講師賞 世界各国講演2016年
公益社団法人 生命科学振興会 理事
2017年
国際電波科学連合 URSI フェロー
2019年
公益財団法人渡邉財団 理事
特別講演
「生体磁場計測の研究と脳科学」
東京電機大学 名誉教授
渡邉財団 理事長 小谷 誠
生体磁場計測の研究と脳科学
1972年マサチューセッツ工科大学(MIT)において世界で初めてSQUID磁束計を使って、人間のあらゆる部位の磁界を計測することに成功しました。私はこの研究成果を当時日本で公害問題を起こしていた粉塵被害の解決へ応用し、健康に有害であることを証明して、日本でスパイクタイヤの使用が禁止になりました。1990年には東京電機大学において国家プロジェクト研究「高度脳磁場計測装置の開発」というテーマで総額57億円の研究開発費をいただき、256チャンネンSQUID磁束計を開発しました。この研究によって、脳の中で前頭前野の脳細胞が最も大切なことがわかりました。前頭前野の脳細胞を発育させる方法についてもご説明いたします。
東京電機大学
名誉教授小谷 誠
(現在仕事をされている団体等)
(公)渡邉財団 理事長
(公)ヒロセ国際奨学財団・理事・選考副委員長
(公)福田記念医療技術振興財団・理事
(公)ロッテ財団・評議員・奨学生選考委員会副委員長
(公)竜の子財団・奨学生選考委員会委員長
(財)産業医学研究財団・理事
(公)日本電気技術者協会・理事・副会長・論文選考委員長
(財)神山財団・評議員
(公)ポ-ラ伝統文化振興財団・評議員
東京電機大学顧問・名誉教授
カシオ計算機(株)・社外取締役
(公):公益財団法人または公益社団法人の意味
(財):一般財団法人の意味
-
(経歴)
1956年
高知県立中村高等学校卒業
1964年
東京電機大学大学院工学研究科修士課程修了
1969年
東京電機大学工学部電子工学科助教授
1973年
工学博士号(東京電機大学)
1975年
マサチューセッツ工科大学客員研究員
1977年
東京電機大学工学部教授
1981年
仙台市スパイクタイヤ公害粉塵研究
1990年
「高度生体磁場計測システムの研究開発」が
国家プロジェクトに選定(60億円)1992年
第31回日本ME学会大会長
1994年
日本ME学会副会長
1995年
磁気健康科学研究振興財団 理事
ライフサポート学会会長1996年
東京工業大学 理工学振興会 理事
1997年
日本生体磁気学会会長
1998年
東京電機大学学長
第11回生体磁気国際会議会長
生体磁気国際会議アドバイザーコミティ委員2001年
日本ME学会名誉会員
大学評価・学位授与機構大学評価専門委員2002年
東京電機大学参与
2007年
学校法人 東京電機大学理事
文部科学省 科学技術・学術審議会学術分科会
研究環境基盤作業部会委員2008年
東京電機大学名誉教授
北里大学客員教授2010年
磁気健康科学研究振興財団 理事長
2013年
カシオ計算機株式会社社外取締役
2016年
東京電機大学・顧問
磁気研究助成選考結果発表
選考委員長 多氣 昌生
選考コメント
磁気健康科学という分野に特化した研究助成は極めてユニークであり、30年近くにわたってこの分野の支援を続けて参りました当財団の実績を私たち関係者はとても誇りに思っています。 研究助成の選考は、なるべく若手の方に多くのチャンスを差し上げること、新たな磁気の応用を目指していること、そして他の助成制度では採択されにくいけれども、この財団ならではの支援の意義が認められること、このような特色を私たちは大切にしています。この度採択された皆様の研究は、とても優れたご提案であることは勿論ですが、このような考えも加えて選出されました。採択された皆様のご活躍期待しております。
30周年記念特別研究助成2020対象者
助成総額:1000万円
-
01
名古屋大学
大学院工学研究科教授
井藤 彰
-
02
藤田医科大学 医学部
リハビリテーション医学Ⅰ講座教授
加賀谷 斉
第2回岡井治特別研究助成対象者
助成総額:100万円
当財団の元理事である故 岡井 治 氏からの寄付金をもとに創設された特別助成です。「神経に対する磁場作用」「磁気刺激による医療応用」に関連した優れた研究が採用されます。
-
01
大阪大学 医学系研究科
心臓血管外科博士課程2年
金田 恵理
第27回磁気健康科学研究助成対象者
助成総額:約1000万円
磁気健康科学を推進するための助成を目的としています。磁気を用いて健康の維持及び増進を図ることをテーマにした基礎研究、応答研究、テーマ指定研究のうち有用な将来貢献度の高い研究が採用されます。
-
01
崇城大学 工学部
ナノサイエンス学科教授
米村 弘明
-
02
名古屋大学 大学院医学系研究科 神経遺伝情報学分野
教授
大野 欽司
-
03
九州情報大学
経営情報学部
情報ネットワーク学科専任講師
荒平 高章
-
04
京都産業大学 現代社会学部
健康スポーツ社会学科助教
小川 まどか
-
05
東北大学
大学院医工学研究科教授
永富 良一
-
06
東京大学 医学部附属病院
脳神経内科助教
小玉 聡
-
07
東北大学 大学院工学研究科
電気エネルギーシステム専攻准教授
桑波田 晃弘
-
08
横浜市立大学 大学附属病院
血液・リウマチ・感染症内科助教
峯岸 薫
-
09
東京大学
大学院総合文化研究科博士課程2年
金子 直嗣
-
10
防衛医科大学校
精神科学講座助教
古賀 農人
当財団は、2024年に設立30周年を迎えます。 30周年記念事業の一環として、2024年までの間、通常の助成額を増額し、研究期間を延長した「特別研究助成」を毎年行います。 磁気健康科学に対する将来性と実現可能性の高い研究が採用されます。